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行政上の強制措置とは?代執行・執行罰・直接強制・強制徴収の違いと宝塚市事件をわかりやすく解説

行政上の強制措置とは?代執行・執行罰・直接強制・強制徴収の違いと宝塚市事件をわかりやすく解説

「代執行って何をする手続きなの?」「行政強制と行政罰の違いが頭の中で整理できない…」――行政書士試験の勉強を進めていると、行政上の強制措置の分野でこうした疑問を抱える方がとても多いです。似た用語が複数登場し、それぞれの要件・手続きまで問われるため、苦手意識を持ちやすいテーマでもあります。この記事では、行政上の強制措置の全体像から、代執行・執行罰・直接強制・強制徴収の4種類の違い、そして重要判例(宝塚市パチンコ店規制条例事件)まで、試験に出るポイントをやさしく丁寧に解説します。今日からの勉強にぜひ役立ててください。

行政上の強制措置とは?全体像を把握しよう

行政行為や行政立法などによって国民に義務が生じたとしても、国民がそれに従わなければ行政目的を実現することはできません。そこで認められているのが、行政上の強制措置です。これは、行政機関が国民に対して強制力を加えることにより行政目的を実現する手段の総称です。

行政上の強制措置は大きく2つに分かれます。将来に向けて一定の状態を実現する「行政強制」と、過去の違反行為に対して制裁を科す「行政罰」です。

そして行政強制はさらに2種類に分かれます。国民が行政上の義務を履行しない場合になされる「行政上の強制執行」と、国民に行政上の義務の不履行がないにもかかわらずなされる「即時強制」です。まずこの大枠をしっかり頭に入れておくことが、この分野を攻略する第一歩です。

行政上の強制措置の全体像

  • 行政上の強制措置 = 行政強制 + 行政罰
  • 行政強制 = 行政上の強制執行(義務不履行がある場合)+ 即時強制(義務不履行がない場合でも可)
  • 行政上の強制執行の4種類:代執行・執行罰・直接強制・行政上の強制徴収
  • 行政上の強制執行には法律の根拠が必要(法律の留保の原則)

行政上の強制執行とは?法律の根拠が必要な理由

行政上の強制執行とは、行政上の義務が履行されない場合に、行政機関が強制的に義務を履行させ、または履行があったのと同一の状態を実現する行為のことです。

行政上の強制執行は国民の権利義務に直接影響を及ぼすものであるため、法律の留保の原則から法律の根拠が必要とされています。勝手に行政が強制執行できるわけではなく、必ず法律に基づいて行わなければなりません。

また重要なのが、行政上の義務を履行させるためには行政庁が自ら強制執行を行う必要があり、民事訴訟を提起して裁判所に強制執行してもらうことはできないという点です。この点は後述の宝塚市パチンコ店規制条例事件の判例にも深く関わっています。

なんで民事訴訟じゃダメなの?裁判所に頼んだほうが確実そうだけど…

行政が民事訴訟を使って義務の履行を求めることは、行政権と司法権の役割分担(権力分立)の観点から問題があるんだ。あとで宝塚市の判例でその考え方が明確に示されているよ!

【最重要判例】宝塚市パチンコ店規制条例事件(最判平14.7.9)

事案の概要

宝塚市パチンコ店規制条例に違反してパチンコ店の建築工事に着手した者に対し、宝塚市長が工事中止命令を発しました。しかし、これを無視して建築工事が続けられたため、宝塚市長が工事の続行禁止を求めて民事訴訟を提起しました。

結論と判旨のポイント

結論は訴え却下でした。最高裁は、国または地方公共団体が行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法律上の争訟にあたらず、これを認める特別の規定もないから不適法であると判示しました。

判旨のポイントは2つです。第一に、国や地方公共団体が財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護を求める訴訟は法律上の争訟にあたりますが、行政権の主体として国民に行政上の義務の履行を求める訴訟は、一般公益の保護を目的とするものであって自己の権利利益の保護救済を目的とするものではないとされました。第二に、行政事件訴訟法その他の法律には一般に行政上の義務の履行を求める訴訟を提起することを認める特別の規定は存在しないとされました。

この判例は「行政は民事訴訟を使って国民に義務の履行を強制することはできない」という原則を明確に示した非常に重要な判例です。試験では事案の流れと結論・判旨のキーワードをセットで覚えておきましょう。

行政上の強制執行の4種類:それぞれの違いを理解しよう

行政上の強制執行には①代執行・②執行罰・③直接強制・④行政上の強制徴収の4種類があります。それぞれの意味と特徴を丁寧に押さえていきましょう。

① 代執行(行政代執行法)

代執行とは、代替的作為義務(他人が代わりに行うことができる義務)を履行しない義務者に代わって、行政機関がその義務を履行し、または第三者に行わせて、その費用を義務者から徴収することです。たとえば、違法建築物の撤去命令に従わない場合に、行政が自ら(または業者に依頼して)建物を撤去し、その費用を義務者に請求するのが代執行の典型例です。

代執行を含めた行政上の義務の履行確保については、別に法律で定めるものを除いては、行政代執行法の定めるところによります(同法1条)。

代執行の要件は以下の4つです(行政代執行法2条)。第一に、代替的作為義務の不履行があること。第二に、他の手段によってその履行を確保することが困難であること。第三に、不履行を放置することが著しく公益に反すること。第四に、法律(条例を含む)により直接命ぜられ、または法律に基づく行政庁の命令によって命ぜられた行為であること、の4点です。

代執行の手続きは「①戒告・通知 → ②代執行の実施 → ③費用の徴収」という流れで行われます。まず相当の履行期限を定めた文書による戒告を行い、それでも履行されない場合は代執行令書による通知を行います。代執行を実施する際は執行責任者が証票を携帯しなければなりません。費用徴収については、国税滞納処分の例により徴収できます。

② 執行罰

執行罰とは、義務者に自ら義務を履行させるため、あらかじめ義務を履行しない場合には過料を科すことを予告し、それでも義務を履行しない場合にはそのつど過料を徴収することです。

執行罰は刑罰ではありませんので、反復して課しても二重処罰を禁止した憲法39条に違反せず、相手方が義務を履行するまで繰り返し課すことができます。現行法では砂防法のみに規定があります。

③ 直接強制

直接強制とは、義務者が義務を履行しない場合に、直接義務者の身体・財産に有形力を行使して、義務の内容を実現することです。即効的かつ強力な執行方法ですが、過酷な人権侵害を伴うおそれが強いため、現行法は一般的制度としてはこれを認めておらず、個別の法律の根拠が必要とされています。

④ 行政上の強制徴収

行政上の強制徴収とは、義務者が金銭を支払う義務を履行しない場合に、直接義務者から金銭を徴収することです。基本は国税徴収法の定めによりますが、国税債権以外の行政上の金銭債権には同法が当然には適用されません。国税以外の金銭債権に強制徴収手続を適用するには、「国税滞納処分の例による」といった明文の規定が法律に必要とされています。

4種類の混同に注意!試験で狙われるポイント

  • 代執行は「代替的作為義務」のみが対象。非代替的義務(本人しかできない行為)には使えない。
  • 執行罰は反復して課せる(憲法39条の二重処罰禁止に違反しない)が、現行法では砂防法のみに規定。
  • 直接強制は強力な手段だが、人権侵害のおそれがあるため一般的制度としては認められず個別の法律の根拠が必要。
  • 強制徴収で国税以外の債権に国税徴収法を適用するには「国税滞納処分の例による」旨の明文規定が必要。

まとめ:行政上の強制措置の学習を今日から整理しよう

  • 行政強制の全体構造(行政強制+行政罰、行政強制の中の強制執行と即時強制)をまず図で整理しよう。今日中に自分でノートに体系図を書いて全体像を可視化することから始めよう。
  • 代執行の4要件と「戒告→通知→実施→費用徴収」の手続きの流れは試験頻出。手続きの順番を間違えないよう、今日から過去問を使って確認しよう。
  • 宝塚市パチンコ店規制条例事件(最判平14.7.9)は「行政が民事訴訟で義務履行を求めることは不適法」というポイントを判旨のキーワードとともに押さえよう。「法律上の争訟にあたらない」という表現が試験で問われやすいので、過去問演習で確認しよう!